エコ照明はいかが

 ベランダが南向きのマンションに住んでいるのですが、玄関は北向きになります。 このドアが鉄板に覗きレンズという構造なので、玄関が非常に暗い。トイレや風呂は窓が無いので真っ暗です。 せっかく南向きの部屋なので、この光を北側の暗い部分に差し込ませる方法はないでしょうか。
 以前、テレビで紹介されていた方法があるのですが、それはマンションを建てるときから採光窓を 組み込む方法と、光ファイバーで北側の部屋に光を導く採光装置です。私の住むマンションは築30年を 超える古いものなので、後者しか利用できませんが、これが1セット100万円程度だとか。
 これでは、電気代と比較して勝負になるかどうか、怪しいですね。なぜこんなに費用がかかるかというと、 採光装置が太陽を自動追尾する仕組みになっているからです。
 そこで、これを安価に作る方法は無いか、考えてみることにしました。

集光の仕組み

 反射鏡によって光を一箇所に集める方法としては、パラボラ(放物線)断面を持つ反射鏡による方法が知られていますね。 図のように、パラボラ鏡の対称軸に平行な光が当たると、反射光は焦点に集まります。太陽光は並行光に近似されるので、 この焦点に光ファイバーの集光口を置けば、反射光を光ファイバーに導くことができます。
 太陽の位置は、時間によって東西、季節によって南北に変化するので、上記の設備はこれを追跡しているのですね。
 似たような2次元曲線の例に、楕円曲線があります。こちらは焦点が二つあって、片方の焦点から発射された放射光は、 もう片方の焦点に集まります。これを利用して、結石を音波で割るときに、一つの焦点に音源を置き、もう一つの焦点を 結石の位置に合わせる、なんてことをしているようです。ようです、というか、私自身腎臓結石でお世話になった経験が あります。
 今回の目的は部屋の照明なので、ここまでは参考までに、ということで。

おたまじゃくし登場

 集光には、はたしてパラボラが良いのか、楕円が良いのか、はたまた円形が良いのか、色々と試してみたいのですが、 もちろん実験の準備といった段階なので、予算もありません。ネットで探してみると集音マイクを自作するというテーマのサイトがあって、 そこで百均ショップで買ったおたまじゃくしを使った例が紹介されてました。でも、今探してみると、どうしても見つかりません。 どういうキーワードで探したんだっけ。
 そこでも、パラボラ反射鏡のことに触れられていましたが、とりあえず球形に近い形状のもので結構な効果が期待できる、 ということが紹介されていました。マイクそのものが反射鏡に比較して大きめなので、そうなるのでしょうね。 ただ、金属製のものを使用すると、音質に問題が出るので、裏側に何かを塗って金属音を防ぐのだとか。 こちらは光を光ファイバーに集めなければならないので、事情が若干異なりますが。
 早速、百均ショップに行って、物色してきました。大き目のものではボウルや皿がありましたが、 底が平らになっているのであまり今回の用途には向いてないかも。やはり、おたまじゃくしにしました。 では、これはどんな曲面になっているのかというと、よく分かりません。実際に光を反射させて見ましょう。
 発泡スチロールに切り込みを入れて、おたまじゃくしをはめ込みます。蛍光灯の光を当てて、 焦点ができるかどうか試してみたのが左側の写真です。まあ、なんとなく集まっているような、いないような。 発泡スチロールに垂直な方向の蛍光灯光源の場合、楕円断面のおたまじゃくしならほぼ一箇所に集まる条件が あることになりますね。
 では、目的の太陽光を当ててみます。ハンドリングしやすいように柄を曲げて、おたまの開口面と平行くらいにしました。 これを持ち上げて、太陽に向かってあっちへ向けたりこっちへ向けたりしている様子は、 なにやら宗教がかって厳かな雰囲気ですが、傍から見るとばかげているかも。
 結局撮影も自分でやらなければならないので、地面において撮ったのがこの写真です。 蛍光灯の時と大差があるようには思えませんね。とりあえず、一番明るくなっているあたりが焦点だということにします。

いよいよ光ファイバーへ

 光ファイバーは、某電子工作部品屋さんに売ってました。光オブジェなどに使うためのプラスティック製で、 2,000円くらいだったと思います。これを上記のおたまの焦点に固定するのに、 店舗のポップカードなどを固定するクリップを使います。おたまじゃくしそのものを固定するのにも、 似たようなクリップを使います。どちらも、400円程度。今回は、電気スタンドのブームを利用して、 角度を調整しました。グラグラというかブラブラするので、やりにくいです。
 光ファイバーのほうも、買ってきた状態では先端の断面がきれいじゃなかったので、 カッターナイフで切りなおしました。そのほうがいいかどうかは、分かりません。
 光ファイバーの反対側の端を部屋の北側の暗い部分に引っ張っていって、どのくらいの光量が得られるのか実験するのですが、 ここで思わぬミスが…。光ファイバーがもつれてしまいました。
 無理に引っ張ってもつれを解こうとすると、ガラス製なら折れる(切れる)、プラスティック製なら白濁する、 ということが起こる可能性があります。光ファイバーは、一方の末端から中に入った光を、ファイバーの側面に全反射させ、 反対側の末端まで導くわけですから、切れることは勿論途中が白濁するのもまずい。 また、側面で全反射させるためには外側に傷がつくのもまずいんじゃないですかね。つまり、 ファイバー同士があまりこすれあうのも良くないんじゃないか。でも、こうなるとそうも言ってられません。 悪戦苦闘30分、やっともつれを解きました。

さて、明るさは?

 今回の実験では、光源は直射日光、反射鏡は直径10cmほどのステンレス製おたまじゃくし、 光ファイバーは太さ0.5mmほどのプラスティック製で長さは20mほどのもの1本のみ。 どの程度光が取り込めたかはこの写真では分かりにくいですが、明るい部分では新聞も無理なく読める程度です。
 実用化に向けての改善点は色々ありますが、どれも大変です。

1.光量

 やはり、一部分だけ新聞が読める程度の明るさにするのではなく、トイレ程度の照明になるくらいの光量はほしい。 おたまじゃくしを中華鍋に変えればいいのか、光ファイバーを増やすのか、検討しなければなりませんね。

2.時間帯

 正確なパラボラ曲線断面ではないので、焦点がぼやけた結果、かえってもつれを解く時間(約30分)を経ても 集光することができたようです。しかしここで、私の部屋が「南向き」なのではなく「南南東向き」であることに 気がつきました。5月中旬のこの時季、午後2~3時あたりでベランダに直射日光が当たらなくなる。 「へえ、そうだったのね」といった感じ。出勤前の朝の時間帯だけ利用するなら、それでもいいでしょうが。

3.季節による仰角

 時間帯とも関連しますが、季節によって太陽の高さも変わりますよね。朝だけ採光するとしても、 2~3ヶ月に一度は角度を調整してやらないといけないでしょう。

4.できれば一日中

 直射日光は当たらない時間帯があるにせよ、空の明るさを取り込む方法はないものか。 湯を沸かしたり発電したりしようってんじゃないですから。明かりだけですもんねえ。